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いつの世も、迷信はひとびとを怖がらせます

 人間って、なぜ迷信を信じるようになったと思います?血液型診断は科学的な根拠もないし、あと、ぼくもよく使いますけど「俺は晴れ男だから」とか。晴れ男なんてないじゃないですか科学的に考えたら。では、なぜそれを信じるのか。

 たとえば『三隣亡』って聞いたことありますか?「さんりんぼう」と読みます。その意味は、「この日に家を建てると、両隣3件が火事で滅ぼす」という恐ろしい日です。この凶日が流行したのは江戸時代末期なんですがもともとは《三輪宝》といわれ「建築に吉」とされていたんです。あるとき暦の作成者が「よ」を「あ」に書き間違えて、「良し」が「悪し」にすり替わった。しかし《三輪宝》という字面だと不吉なイメージじゃないから三隣亡と表記を改めました。書き間違えで意味が逆転するなどすでに信憑性に欠けますよね。にもかかわらず建築業界では未だに信じられています。

 この他にも、根拠の乏しさにも関わらず、依然として行われている迷信が数多くあります。なぜ、廃れずに残るのか?おそらく、それはニーズがあるからでしょう。ニーズがあるものは、淘汰されません。たとえ、そこに真実がなかったとしても。

 数年前『大殺界』や『天中殺』という言葉が流行しました。前者は細木氏が広め、後者は高尾氏が生み出し、メディアで拡散しました。ともに「何をやってもダメな時期」とされ、運気が悪い時期の代名詞のような印象を世間に強く与えました。最近は正しい占術法が広まり、それを鵜呑みに信じる人もかなり減ってはきました。大殺界と天中殺ですがその正体は《空亡》なんです。

 空亡とは、主に四柱推命や六壬神課で使われる判断基準のひとつ。本来の意味は「吉作用も半分、凶作用も半分」つまり《無効化》の時期です。必要以上に恐れる時期ではないのです。空亡はそれ単独で判断はせず、他の判断要素に加味させ「吉に出るか凶と出るか」を読み解く判断材料にすぎません。吉神に空亡が乗れば、吉要素が半分になってしまうのでちょっと残念な時期。しかし凶神に乗れば、転じてラッキーな時期です。

 占いというのは、どうしても単純にみがちですがプロの占い師というのは「人をみて法を説く」のです。けして暦のみで吉とか凶などと安易な判断はいたしません。いつの世も、迷信はひとびとを怖がらせます。そういう迷信を紐解き、人の心から恐怖を取り除く…それが占い師の使命だとぼくは考えています。